侵害予防調査(FTO調査)は新たに開発された製品またはプロセスを商品化する前に実施すべき重要な調査です。侵害予防調査(FTO調査)は、第三者の知的財産権に対する潜在的な侵害の有無を判断することを主たる目的とします。
侵害予防調査(FTO調査)は、登録済みまたは出願中の特許に対する検索と、調査対象とする製品、プロセス、またはサービスの、第三者が保有する特許に対する侵害の可能性に対する法的観点からの判断が主たる内容となります。クリアランス調査、侵害可能性調査、または実施権確認調査と呼ばれることもあります。
実施の自由(Freedom to Operate)とは、第三者が保有する特許を侵害して訴訟を起こされるリスクを負うことなく、技術を製造/使用/販売/その他商業的に活用できる「能力」を意味します。したがって、製品の製造、販売、マーケティング、または輸出入等の行為の前に調査を実行する必要があります。
侵害予防調査(FTO調査)のレポート例
侵害予防調査(FTO調査)の重要性
精緻な製品化戦略立案の為には、製品開発の初期段階での特許調査が求められます。侵害予防調査(FTO調査)は、製品開発における技術的側面と法的側面からの検証に有益です。
- 侵害予防調査(FTO調査)は、企業/個人が第三者の権利を侵害するリスクを回避する上で有益な調査となります。
- また、この調査は、製品の再設計、ライセンス導入を目的とした特許の特定、製品の輸出入、事業活動の対象とする市場の変更など、事業上の意思決定を行う上でも有益です。
- 加えて、将来の市場展開を予測する場面での、リスクの軽減にも有効と考えられます。
調査はいつ実行するか?
市場では、広範な事業領域にわたって活発な特許出願が行われているため、製品/プロセス開発ライフサイクルの各段階で、侵害予防調査(FTO調査)を実施することが求められます。通常、次のシナリオで実施されます。
- 初期段階 ─ 製品開発初期段階で侵害予防調査(FTO調査)を実施することで、既存の特許内容に抵触しないよう発明を修正することで侵害リスクを避けることが可能となります。危険な特許を早期に特定することで、侵害のリスクが最も高い特許のクレームを回避した新たな研究開発の方向性を見出すことも可能となります。
- 事業化前段階 ─ 一般的には、製品の商品化または発売前に、侵害予防調査(FTO調査)を実施します。この段階で妨げとなる特許が特定された場合、製品の展開前に新たな設計変更(再設計)や、特定の市場で製品を商品化するためのライセンス導入、等を検討する必要性が見いだされる可能性があります。
侵害予防調査(FTO調査)を実施することで、ライセンス導入、権利化されている機能を回避した設計、または製品や技術の商品化の推進、等の方針を決定することが可能となります。
侵害予防調査(FTO調査)の重要な要素
侵害予防調査(FTO調査)は、以下に示すようないくつかの重要な要素を考慮して計画される必要があります。
- 地理的制限:知的財産権はさまざまな管轄区域に固有であるため、侵害予防調査は、製品の発売/商品化が計画されている特定の地理/国/地域に関連するよう設計される必要があります。さらに、過去30か月間のPCT出願も調査の対象となります。
- 期間:特許権の有効期間が20年間であることに鑑み、侵害予防調査は調査対象となる特許の出願日から20年間を考慮する必要があります。したがって、侵害予防調査の対象は権利が存続している特許が対象となり、出願日から20年を超える特許は調査対象から除外されます。
- クレーム内容を中心とした分析:クレームは特許文書の中で最も重要な部分です。特許請求の範囲は特許権の「境界」、保護されるべきものを明確に定義します。したがって、侵害予防調査(FTO調査)の分析では、基本的に特許請求の範囲のみを対象として実施されます。
- 製品の機能/部品、部材:また、侵害予防調査は、製品を構成するすべての部品、部材、及び機能、等を対象として実施される必要があります。調査対象となる技術/製品/デバイス/プロセスは、多数の個別、独立した要素から構成されている場合があり、そのようなケースでは、それぞれに対して単独または組み合わせた場合を想定した調査が必要となります。
- 特許の法的地位:調査の対象は権利が有効に存続している特許のみとなります。権利失効や権利が取り下げられているような特許は調査から除外する必要があります。
侵害予防調査(FTO調査)のレポート例
侵害予防調査(FTO調査)に対するSciTech Patent Artのアプローチ
研究の開始時に情報を収集し、分析することで、効果的な侵害予防調査が実施できます。効果的な調査実施においては、収集される情報の品質が重要な要素となります。SciTech Patent Art(SPA)は、20年以上にわたって侵害予防調査を実施しており、関連性の高い先行技術や障害となる特許の特定に効果を発揮する独自の調査手法を開発しました。この調査手法は以下のような要素から構成されています。
- 作業開始前に、侵害予防調査に関連する十分な情報を収集します。収集される情報には次のようなものが含まれます。
- 確認が必要となる機能や特長の一覧を含む、調査対象技術の詳細な説明。製品の主要な機能や周辺的機能を完全に理解することで、適切な調査戦略を設計することが可能となります。
- 技術の事業化が予定されている国や地域の一覧
- 特許検索は、適切なキーワードと分類コードを使用して、特定された主要な機能に対して実行されます。
- 検索は、Derwent Innovation, Questel Orbit, Patbase, Chemical Abstracts などの複数のデータベースを思料して実行されます。
- 譲受人/発明者に基づく追加検索や引用検索も行われます。
- 侵害予防調査を実施する際には、次の側面を考慮する必要があります。
- 出版物の種類:有効な特許(権利化された特許および特許出願)
- 対象国:対象国および過去2年半の間)に提出されたPCT出願
- 調査期間:過去20年間
- 本発明の全ての機能をカバーするために、狭い検索と広範な検索の両方が実行されます. 個別の機能を対象とした検索も実施されます。主要な機能はプロセスステップ、構成、デバイスや部品、部材、等にわたる可能性もある為、それぞれの機能に対する個別のレビュー、また、並行して機能の組合せに対するレビューも実施されます。
- 取得された結果は、それぞれの特許ファミリーからひとつのファミリーメンバーをダウンロード、対象となる国における特許とファミリーメンバーの特許の関連性を審査します。主題の1つ以上の構成要素を主張する特許は、関連性があるとみなされます。
- 詳細な分析は、有効な特許に対してのみ実行されます。分析は、スクリーニングステップで特定された特許のクレームに基づいて実行されます。すべての興味深い特許について、関連する抜粋が得られます。クレームされた内容に、説明からの裏付け情報が必要な場合は、そのような事項も提供されます。
- 特許に複数の登録特許がある場合、それらも分析されます。係属中の特許出願の場合、最新の補正された請求項が分析の対象となります。
- 特許の請求項、特に独立請求項を詳細に分析します。係属中の特許出願は、ファイル履歴から取得できる最新のクレームのセットに基づいて分析されます。
- 外国語特許の場合、分析はタイトル/要約/請求項の機械翻訳に基づいています。
- 対象国のファミリーメンバーそれぞれの法的地位を確認する必要があります。
関連性の高い結果は、その内容を評価するために本発明の重要な側面と相関する形で提示されます。
・関連する技術は、製品要素、プロセスステップ、デバイス/製品コンポーネントなどに対してマッピングされます。
・関連特許は2つのカテゴリに分類されます。
・カテゴリA:主請求項/独立請求項特許/明細に基づいて、提案された製品と正確に一致する可能性の高い特許
・カテゴリB:主請求項/独立請求項特許/明細に基づいて、提案製品に類似する関連特許
- 関連特許は、必要な分析フィールドを備えたExcelスプレッドシートで提供されます。特定された関連性の高い文献、及び部分的に関連が認められる文献(カテゴリA/カテゴリB)は、書誌情報およびクレームベースの技術分析とともにレポートに表示されます。
- 最も関連性の高い/周辺文書(EP、US、JP、PCTなど)の全てのファミリーメンバーの法的地位が確認されます。クライアントの要望に応じて、放棄/失効した特許も別のリストとしてレポートに含まれます。
侵害予防調査(FTO調査)に使用されるデータベース
等
侵害予防調査(FTO調査)について詳しく知りたい場合、または経験豊富な調査担当者に調査を希望する場合は、SciTech Patent Artにお問い合わせください。